ブータン唯一の証券取引所(Royal Securities Exchange of Bhutan Limited)は、中央預託機関および清算機関の機能も担う。資本市場はRMA法2010と金融サービス法2011の枠組みの下で運営される。商品に応じて、中央銀行・金融当局(Royal Monetary Authority)、RSEB、企業規制当局(Corporate Regulatory Authority)、産業・商業・雇用担当省(Ministry of Industry, Commerce & Employment)が監督、登録、取引所運営、企業関連事項を担当する。調査した市場概要では、時価総額は約503億ニュルタムで、銀行、保険、製造、観光、出版、流通などの分野の企業が含まれていた。市場の裾野が限られるため、価格変動が大きくなり、取引相手が少なく、分散投資も難しくなる可能性がある。 個人投資家は上場株式や募集される社債・国債を取引できる。コマーシャルペーパーは通常、短期の企業投資であり、公表された募集には、例えばBhutan Carbide & Chemicals Ltd.の3億2,400万ニュルタム、Bhutan Tourism Corporation Ltd.の8,000万ニュルタム、Bhutan Polymers Company Ltd.の5,000万ニュルタムがあった。募集によっては、コマーシャルペーパーの額面が10万ニュルタムだった。募集状況、価格、満期、取引量は発行ごとに異なる。コマーシャルペーパーに元本保証はない。価格と流動性のリスクに加え、発行企業が利息や元本を支払えないリスクがある。 取引所を利用するには、認可ブローカーに証券口座またはブローカー口座を開設し、銀行口座と連携させる必要がある。通常必要な情報には、市民身分証明書(Citizenship Identity Card)、納税者番号、銀行情報、中央預託機関コード、連絡先、住所が含まれる。RSEBは市場情報、上場証券、債券、企業発表を提供し、RSEBのシステムを通じてオンラインまたは携帯電話で取引できる。注文前にブローカーの認可、決済、保管、配当、株主総会の通知、買戻し募集の有無を確認する。本人確認とマネーロンダリング対策の審査では、追加情報が必要になる場合がある。 ブータンにはファンド運用規則(Fund Management Rules & Regulations 2019)に基づく規制対象ファンドの枠組みがある。ファンド運用会社にはRMAの認可が必要で、ファンドの設立、目論見書、広告には所管当局の承認が必要である。ファンド運用者はリターンを保証できず、ファンド資産を担保に貸し付けることもできない。個人投資家向けに幅広い商品を示す信頼できる公開一覧は、調査した資料から確認できなかった。そのため投資前に、現在承認されている商品、純資産価値、運用・取引手数料、解約期間、支払条件、ロックアップ期間の有無を書面で確認する必要がある。 株式型クラウドファンディングも正式な選択肢である。ブータンの株式型クラウドファンディング・プラットフォーム(Bhutan Crowdfunding)は、クラウドファンディング規則2019に基づく、RMA認可のRSEBプラットフォームである。新興企業、新規事業、零細・小規模産業(Cottage and Small Industries)への持分を募集することがある。最低投資額は10ニュルタムで、個人投資家の1社あたり上限は10万ニュルタムである。機関投資家には対応する上限が定められていない。募集はオール・オア・ナッシング方式で、目標額に届かなければ投資家に資金が返還される。初回投資は48時間以内なら撤回できる。募集が成立すると投資家は株主となる。プラットフォーム手数料は返金不可で、交渉による変更もできない。事業が失敗したり、流動性がなくなったり、情報が不十分だったり、後に持分が希薄化したりする可能性がある。寄付型、リワード型の募集は証券投資ではない。 企業への直接投資と外国直接投資(FDI)は、小規模な上場株ポートフォリオとは異なる規則に従う。外国直接投資規則(FDI Rules & Regulations 2025)は2025年7月18日に施行された。外国投資は原則としてネガティブリスト掲載分野を除くすべての分野で可能である。FDI登録証明書の取得後、会社を会社法2016に基づき設立する。外国投資家には通常20%以上の持分が必要であり、外国機関投資家は10%以上が必要である。その他の活動では、分野に応じて製造業で5,000万ニュルタム、サービス業で2,500万ニュルタムの最低事業費と、外国持分の上限74%が適用される。分野別付属書により、優先活動では最大100%のより高い持分が認められる場合がある。影響志向の新興企業向けベンチャーキャピタルファンドは認められている。これらの規則が対象とするのは適格な戦略的または機関投資家による投資であり、容易に利用できる一般個人向け商品の代替ではない。外国投資家は交換可能通貨で投資でき、インド人投資家についてはインドルピーも定められている。出資は、事業開始と該当する会社設立要件の履行のうち、先に到来する期限から3か月以内に行わなければならない。資本、キャピタルゲイン、配当の本国送金は該当する外国為替規則に従い、配当にはRMAへの申請と株主決議が必要である。上場FDI企業の株式を取引所経由で譲渡する場合は、MoICEの承認も必要になることがある。不動産取引はFDIネガティブリストに含まれる。 不動産の直接所有や競売での取得は有形資産となるが、流動性のある幅広く分散された投資商品ではない。RSEBは不動産、機械、その他資産の電子競売を支援する。公に確認できるREITの募集は見つからなかった。ETF市場や、海外の個人向けブローカーを通じた一般的な標準アクセス方法も確認されていない。 ブータン国民が外国証券を取得、保有、売却するには、外国為替規則2026(Foreign Exchange Regulations 2026)に基づき、事前にRMAの承認が必要である。海外企業への投資や海外での事務所設置にも承認が必要な場合がある。そのため外国証券アプリを使えば自動的に適法な投資ができるとは限らない。投資の前に、外国為替法、マネーロンダリング対策、税務、資金の本国送金を個別に確認する必要がある。 暗号資産は現在、一般個人投資家向けの通常の投資手段ではない。2025年4月30日のRMA見解によると、マイニングと取引所取引が認められるのは、Gelephu Mindfulness City(GMC)に登録された企業、または同枠組みに属するそのビジネスパートナーに限られる。一般の取引目的で国内銀行から暗号資産取引口座に資金を入れることは、引き続き制限されている。価格下落、保管上の問題、詐欺、規制変更、全額損失のリスクも高い。 どの投資でも、期待リターンだけでなく、配当、評価額、満期、信用力、手数料、税、為替リスク、売却可能性を考慮する。具体的な費用には、ブローカー手数料、取引所・清算・保管手数料、ファンド手数料、発行・決済費、クラウドファンディング手数料、通貨換算費、税務・法務費用が含まれる場合がある。現行の個人向け手数料一覧と一般的な税率は、調査した公式資料から確認できなかった。投資前に、該当商品に関する現在のRMA、RSEB、CRA、MoICEの通知と、費用の書面による一覧を入手する。
ブータンでの投資
ブータンでの投資には主に、上場株式、募集される債券、コマーシャルペーパー、ファンド、クラウドファンディング、企業への直接投資がある。正式な資本市場は小規模で集中しており、ブータン王立証券取引所には18銘柄が上場し、9社の認可ブローカーが営業している。投資家自身がリターン、流動性、損失のリスクを負い、市場価値は保証されない。
ヒント
ブータンで投資する場合は、長期間使う予定のない資金に限る。直接投資では、認可RSEBブローカーと現在募集されている証券がまず検討対象となる。クラウドファンディング、不動産、企業への直接投資にはそれぞれ異なる拘束や損失リスクがある。ブータン国民は、外国証券や暗号資産を通常の代替手段と考える前に、必要な承認や法的な利用資格を確認する。

